2025夏 『伝言』 

中脇初枝 著(講談社)

最近読んだ本    釋尼光智

 中脇初枝さんの満州を舞台にした作品としては以前『世界の果ての子どもたち』も読みましたが、今回は農村ではなく都市部の恵まれた家庭の女子学生を中心に描かれています。

 短い作品の中に、満州での暮らしの様子、そこで生まれ育った人と移り住んだ人との思いの違い、戦争を語ることの難しさと勇気、被害者でありながら加害者でもあるという視点などがぎゅっと詰まっていました。

 物語の語り手として、次の3人の人物が登場します。

 ひろみ:主人公の女学生。満州生まれ、国のために尽くすことを当たり前と教えられ勤労動員に励む。真面目で頑張り屋。素直にしたがっているが、次第にその影にある加害や矛盾に気づいていく。

 李太太:近所の中国人女性。日本の侵略によって息子を失いながらも、ひろみ一家を助ける。後に日本人と親しかったことで苦しい立場に追い込まれ人生を大きく変えられてしまう。

 島田:気象研究所の青年、勤勉で母親思い。豊かとは言えない家庭の出身で母一人子一人。尊敬する上司に報いようと励むうちに満州で働くこととなるが、次第に兵器研究、731部隊、登戸研究所とも関わりを持つこととなる。

 立場のちがう3人の視点が描かれることで、戦争の複雑さと同じ場面をどう見たのかという違いがわかる書き方になっています。

 前半のひろみは「国のために」と信じて働く純粋な女子学生として描かれます。しかし後半では、同調圧力のなかで友人をかばえなかったこと、李太太が苦しんだのは自分の存在やふるまいが原因かもしれないという気づき、満州の生活は“奪ったものの上”にあったという認識といった、加害者としての視点が語られます。また、引き揚げを体験した時の恐怖や人間の残酷さ、持たないときに人に与えることの難しさなど、人間が限界になった時の状況も知っていきます。年を重ねたひろみは、引き揚げ体験者から話を集め、次の世代へと伝える活動をします。

 いつも困っている人にすぐに気づく、手をさしのべられる祖母の姿を尊敬する孫のあかりは、職場でパワハラを告発し苦境に立たされます。「見てしまったこと、気づいてしまったことから目をそらさない」苦しさと勇気が、世代を超えて描かれていました。

 また、個人的な思い出なのですが、物語の後半に出てくる高知の大杉という地名は、私自身が子ども時代を過ごした場所でした。その地域の小学校にごく短期間ですが、日本語があまり話せないお姉さんが通っていて、遊んでもらったことを覚えています。今思えば、残留孤児の方のお孫さんだったのかもしれません。子どもの頃から引き揚げの大変さも、日本の加害も、テレビで見たり本や授業で学んできましたが、今回は両者のつながりが感じられた読書体験となりました。

 体験していなくても戦争は私と無関係では無い、学び続けていくこと、「なかったことにしない」「伝えていく」ことの大切さがあり、これからにもつながっていくと思います。日本の学校で教育を受け、社会で空気を読んで育ってきた自分を振り返ると同調圧力をかける側になっている場面も多くあるし、その場で少し変なのではと思った事を指摘できず見過ごしてしまうことも多いです。勇気を振り絞って語ってくれた先人の言葉を受け止め、後世に伝えていくことは本当に大切なことだと感じました。

 この本は、つい先頃文庫化もされました。私は単行本で読みましたが、お寺の貸し出しコーナーに置いておきますので興味のある方は是非ご一読下さい。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025夏 読者の声

 100号記念に、お寺に来られた方を中心に投稿を募集しました。99号の寺報を出した後に次が100号だと気づいたので、前号に募集記事をのせられず残念に思っています。

 読者投稿は常時募集しております。よろしくお願い致します。


私が宗泉寺さんの門徒となった訳

E・K様

 私が宗泉寺さんの門徒になったのはご住職のたった一言でした。

 義理の兄の納骨の時、ご住職がこのお墓には魂は入っていますか?と聞かれました。私はその時、家でお寺を探す時が来たらここだと決めていました。9年前、とうとうその時が来てしまい、迷いなく宗泉寺さんにお願いしました。

 でも本当にこのお寺さんで良かったなあとつくづく思います。教えも考え方も私にピッタリです。これからもお手伝い出来ることがあるならお手伝いさせていただきたいと思っています。

 


お手紙内の一部抜粋  井川絹子様

 宗泉寺報 夏号で『お墓どうしてます? キミコの巣ごもりぐるぐる日記』を知り、読みたい!!と思っていました。

 お盆合同法要の時にお伺いしたとき、貸し出しコーナーにある可愛い表紙の本を見つけ、迷わずお借りして帰りました。

 楽しく拝読させて頂き、我が家も数ヶ月前までは「墓じまいどうする?」と悩んでおりましたが住職様のご紹介で、東本願寺大谷祖廟に入れて頂く事が出来、落ち着いてこの本を読ませて頂きました。

 ※宗泉寺の玄関で本の貸し出しをしています。そちらから、前回の寺報でご紹介した本を読んでの感想を寄せて下さいました。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 永代経御紐解法要と春期彼岸法要勤まる 釋尼光智

 今年も無事に宗泉寺の春のお彼岸と永代経をお勤めすることができました。法要中にネット中継の音声が切れるトラブルがあり、お名前を拝読している途中で音声が切れていました。申し訳ございませんでした。

 今回は滋賀から瓜生崇先生をお呼びして、「救い」をテーマにお話ししていただきました。お話を聞いた感想を書かせていただきます。

 住職から先生にアジャセ王子の救いの法話をして欲しいとリクエストしていたそうです。宗泉寺の2月の聞法会でアジャセ王子の救いの話題があり、良い機会だと思ったということでした。アジャセ王子は『観無量寿経』という浄土真宗で大切なお経にも取り上げられています。

 アジャセ王子が父親のビンバシャラ王を殺すお話しなので、息子が父を克服する親子関係の心理学の例話として聞いた方もいるかと思います。

 今回は『涅槃経』のアジャセ王子のお話が取り上げられていました。父親であるビンバシャラ王を幽閉し残酷な方法で殺してしまった事を後悔したアジャセ王子。王子は父親殺しの罪で地獄に落ちることを恐れます。身心の弱り切ったアジャセ王子は、医師に紹介されてお釈迦様に会いに行き、お釈迦様のお話を聞いて救われるというお話です。親鸞聖人が書かれた『教行信証』には

 世尊、もしわれあきらかによく衆生のもろもろの悪心を破壊せば、われつねに阿鼻地獄にありて、無量劫のうちにもろもろの衆生のために苦悩を受けしむとも、もつて苦とせず(アジャセ王子のセリフ「お釈迦様、もし私が人々の苦しみの心を壊せるならば、私がいつも最も辛い地獄にいて、どれだけの時間、人々のために苦しみを背負うことになっても、それを苦しみとしません」)

という『涅槃経』の言葉を引用しています。

 お釈迦様のお話を聞いて安心したアジャセ王子が、今までは私は地獄に落ちたくないと恐れていましたが、私は地獄に落ちてもいいから他の人を救いたいと心が変わったそうです。親鸞聖人の『歎異抄』のお話にある法然さんにだまされて地獄に落ちてもかまわない「地獄は一定すみかぞかし(地獄が私の居場所)」といっていたお話と同じだなあと思いました。そこまで思える気持ちって何なんだろうと思いました。

 また、瓜生先生の関わっているカルト問題のお話しも聞きました。カルト宗教の信者の方を馬鹿にしたり悪い影響しかないと見る、世間の視線への指摘も印象に残りました。宗教二世の人々の苦しみや、カルト宗教団体を引き金に起こった重大事件の報道を通じて、カルト対策に深く携わるなかで信者の人たちは、ものすごく真剣に救いを求めていると感じたそうです。

 真面目に戒律を守って修行する僧侶が、仏の名前を呼ぶだけで救われるという教えを説いた法然上人を受け入れることができなかったのは、頭も良く、集中力もあり、真面目で勤勉な人が、ものすごく真剣に仏教に救いを求めていたから譲れない部分があったからです。真剣になればなるほど、私の打ち込んでいるもの以外を排除する心が起こってしまいます。あなたも私も色んな方法があって良いですねと気軽にいえないくらい頑なになってしまいます。

 この日のお話は宗泉寺のYouTubeでお聞きいただけますので、是非そちらをお聞きください。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 お寺デ健康体操報告

 おみがきの後に、固まった体を体操でほぐしました。今回はトレーニング用のラダーを使った運動から。線路上の升目の上を左右の動きも交えながら行進していきます。慣れるまではなかなか難しく、いつもは使わない部分の脳みそを使えました。転倒防止の運動だそうです。その後はいつもの柔軟さや筋力を保つ運動もしました。次回のおみがき後も体操の会を予定しています。みんなでおしゃべりしながら運動するのは楽しいですよ! 是非ご参加下さい。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 おみがき報告

 春のお彼岸、永代経に向けてのおみがきを3月15日土曜日に行いました。お寺の仏具をボロ布とみがき剤で綺麗にしました。有難うございました。話したい人はぽつりぽつりとおしゃべりをしたり、静かに作業する時間もあったりとゆっくりした雰囲気でした。次回は机と椅子も使ってみようと思いますので、正座やかがむ姿勢が辛いという方でお手伝い下さる方もご参加下さい。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 正信偈を書く会―写経の会―

 2月17日、4月7日に宗泉寺本堂で開催しました。2時の開始時刻前後に集まり、1時間程ほど各々静かに写経をしています。お寺で準備した中から好きなテキストやプリントを選んで、ボールペンや筆で書いています。終了後時間のある人は30分ほどお茶を飲みながらおしゃべりして解散します。原則月1回の開催ですが、気が向いたときのみの参加もできますのでお気軽にどうぞ。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 みんなで本を読むー聞法会の報告

 住職から30分ほど正信偈についてお話を聞いた後、法語カレンダーの言葉に関する短い文章を読みました。仏教や真宗の話もしますが、法語をきっかけに、それぞれ普段思っている事や体験などを話しました。

2月5日(水)

「名号」は 私たちの地獄に響く 阿弥陀のいのち  高史明

 読んだ文章に関連して、親子関係についてよく引かれるアジャセ王子のお話を住職から説明しました。程度の差はあれ、どちらの立場でも親子関係で悩んだことのある方は多いことでしょう。また、法語の高史明さんの本を読んで心に響いたとお話し下さった方がいました。ちくま文庫『生きることの意味』という本です。書店でも手に入りやすい名著です。

4月21日(月)

この私のいのちに いつも如来のいのちが 通い続けている 藤澤 量正

 普段はいのちについて考えることはあまりないけれど、病気や事故が身近になった時になって気づくのではないかという文章を読みました。

 子どもの頃に重い病気をした方から、同じ病気だったご友人が亡くなった時の話を聞きました。いただいたいのちということを色々思う時間になったと思います。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 おやきを作って食べよう

 2024年12月8日宗泉寺客殿にて開催されました。会の世話人の伊川眞理さんに教えていただき、信州名物おやきを作って食べました。あんこや野沢菜炒め、味噌味で炒めたナスなどを小麦粉の生地に包んである長野の郷土料理です。今回は更にフライパンで香ばしく焼いたできたてをいただきました。各家庭によって色々な作り方があるそうで、昔は囲炉裏の灰のなかで焼くこともあったそうです。みんなで作っておしゃべりしながら食べるのはやはり楽しく、とてもおいしかったです。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 柏餅を作ろう

 4月20日の日曜日に宗泉寺客殿にて開催。世話人の伊川眞理さんに教わりながら上新粉の生地をこねるところからつくりました。生地をこねるのは少し難しかったり、蒸したてなので熱かったりしたのですが、楽しくて、みんなで作ったという充実感もありました。ほんものの柏の葉に包まれた柏餅はよもぎとプレーンの2種類。試食タイムは餡子の甘さや柏の葉の香りを楽しみました。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan

2025初夏 花御堂―お釈迦様のお誕生日―

 4月8日のお釈迦様の誕生会をお祝いして、今年もお寺の玄関に花御堂をお飾りしました。ご法事や写経会で見えた方が、誕生仏に甘茶をかけてお参りしていました。

 お釈迦様が言われたとされる「天上天下 唯我独尊」という言葉は、世間では世界中で私だけが尊い、という意味で使われることが多いですが、「誰も代わりにならない私として、このいのちそのままが尊い」ということだそうです。あなたも私も、世界の誰のいのちも尊いということをついないがしろにしていないか問われている日でもあると思います。

2025-09-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan