千代田区の国立近代美術館で開催中の展覧会「記録をひらく 記憶をつむぐ」を観てきました。SNSで見かけた感想がきっかけで興味を持ち、足を運びました。
この展覧会は、アジア・太平洋戦争と美術の関係をテーマに、戦時中に描かれた「戦争記録画」を中心に展示しています。
戦争当時の暮らしや戦場を描いた作品、戦後に描かれた作品や一般の人によるスケッチ、反戦を訴える絵も紹介されています。
作品には、写真のように詳細に描かれた記録画、抽象的な表現、戦時中の国の広告に使われたイラスト、丸木位里による有名な原爆の絵など、多様な視点と立場が見られました。今回の展示では取り上げられていなかったのですが、仏教戦争画というのもあるそうです。
当時の雑誌、美術館の方のつけた解説など、理解を助けてくれる展示もあって見応えがありました。
特に印象に残った絵は猪熊弦一郎の《長江埠の子供達》です。戦時中に描かれた中国の子ども達の姿が描かれています。他の絵が黒っぽい重々しい色合いが多い中で、鮮やかで明るい色合いが目立っていました。描かれた子ども達はやせ細って冷めた目でこっちを見ています。ぱっと見かわいい絵かなと思って良く見ると、侵略してきた日本人を見ている様子がわかる絵だと思います。
今回の解説で特に印象に残ったのは、「残酷な戦場の絵であっても、時に戦意高揚につながることがある」という点でした。1枚の絵もひとの受け取り方、扱われ方で意味が変わることもあります。
また、戦争中の画家の仕事の中にも時代的に避けられなかっただけでなく、「社会で認められたい」という気持ちから、結果的に戦争協力になってしまうこともあったのだと思います。
以前、特集番組で「主婦が戦時中に熱心に婦人会活動をしていた」という話を見たことがあります。普段は軽んじられていた女性たちが、活動によって褒められたり、堂々と外出できたりしたからだそうです。人には誰しも「他者に認められたい」という思いがあると思います。もし自分が同じ立場だったら同じ行動をとっていたかもしれません。
今を「新しい戦前」にしないためにも、過去の出来事を知ることは大切だと感じます。今回の展示を通じて、一見すると戦争とは無関係に見える絵画も、さまざまな形で戦争と結びついていたことを、あらためて実感しました。
東京国立近代美術館1階企画展ギャラリーにて2025年10月26日まで展示予定とのことです。