2024冬 最近読んだ本 釋尼光智

『本の栞にぶら下がる』岩波書店

『隣の国の人々と出会う:韓国語と日本語のあいだ』創元社

斎藤真理子 著


 先般発表された二〇二四年のノーベル文学賞を受賞した作家をご存知でしょうか。ハン・ガンさんという韓国の作家さんです。アジア人の女性として初めての受賞ということで話題になったと記憶しています。今回取り上げた二冊のエッセイ本の著者は、ハン・ガンさんの作品や他にもたくさんの韓国文学を翻訳し、紹介されている斎藤真理子さんです。

 『本の栞にぶら下がる』の方は、斎藤さんの読書についてのエッセイです。タイトルには読書するときに付箋やメモではなく、栞をはさむようにお話の流れや心に残った部分を大事にするのもいいのではないかという意味が込められているのだそうです。若い頃に読んだ本やその時代のこと、趣味の編み物をしながら!読むのに良い本のことなど、取り上げられている話題は幅広く、とても面白く読みました。斎藤さんが学生の頃に読んだ流行作家のことなども出てくるので、斎藤さん(一九六〇年生)と同世代の方は懐かしいのではないかと思います。

 もう一冊の『隣の国の人々と出会う』はハングルの成り立ちや仕組み、韓国文学、韓国の歴史、現代の文化と社会など基本的なことを知ることができる本でした。十代以上の人向きの本だそうで、読みやすく丁寧に書かれています。斎藤さんがなぜ韓国語を学ぶようになったのかという話も書かれているので、読みながら一緒に隣の国のことを知っていけるような心強さがあります。韓国文学を読んだことがなくても、韓国の映画やドラマや音楽に親しんでいる方は近年増えていると感じます。そういうものを観賞する上でも、どういう歴史や文化があるのかを知ると理解が深まるのではないでしょうか。

 日本が侵略した時代と朝鮮戦争があったことは歴史の授業で習ったことがあっても、民主化運動のことなどあまり知らなかったのでとても勉強になりました。歴史の影響でハングルを何語と翻訳するのがよいのか揺れてきたこと、日本との関係、南北に今も別れていることの影響、在日朝鮮・韓国人のことなど。著者の体験も含めて、丁寧に伝えてくれているなあと思いました。これらのこと全てを含んだタイトルの“あいだ”は、すごく重要な感覚だと思います。

 私は韓国の小説は短編を少しと長編を一冊読んだことがあるくらいなのですが、せっかくたくさんの小説が翻訳されているので色々読んでみたくなりました。隣の国の人たちの日本人と似ている部分や文化の違い、時代に人生を翻弄されながらも生きる人の思いの一端を小説を読むことでも知ることができるのではないかと思います。

2025-01-01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan