『熱帯』

森見登美彦著 文藝春秋

 著者は人気作家で、『熱帯』は直木賞候補にもなった小説です。

 好きな小説家さんが絶賛しているのをSNSで見かけて読むことにしました。

だれも最後まで読んだ人がいない不思議な小説『熱帯』を追いかける人々の冒険譚です。とても面白くて、楽しんで読んでいます。もうすぐ読み終わってしまいそうなのがもったいない気がします。初めのほうで、本のことを語り合う少し不思議な読書会の部分からもうわくわくしました。

 実は十年くらい前に同じ作者の別の小説を読んで最初の数ページで止めてしまい、私には合わないのかと思ったことがあったのですが。今回はそれがウソのように面白くて読みやすいのです。

本にもご縁があるもんだなあと思いました。

釋尼光智

2022-04-30 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『吉野朔実は本が大好き』


本の雑誌社 吉野朔実著

 2016年に病気で亡くなった漫画家である著者が雑誌連載していた読書エッセイ漫画です。色々な本の話題はもちろん、おいしい食事、競馬に学生時代の思い出や映画のことに周囲の人たちのことと多彩。教養があって、ちょっと哲学的で、怖かったりもする面白い著者の作品たちは、このエッセイ漫画で描かれているような読書や友人たちとの語らいから生まれていたのでしょうか。何度も読み返しています。これも、作品を通してのみ出会った一ファンの追弔のひとつなのかなと思ったりしました。

2022-02-23 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『中島らも曼荼羅コレクション#1白いメリーさん 』

徳間文庫 中島らも著


 2004年に事故で亡くなった中島らもの短編集が、最近復刊されました。内容はとても多彩でパワフルです。作家が亡くなってから時間が経つと、書店の棚に置かれなくなったり絶版になったりする本もありますが、名作復刊の企画でかつて読んだ人だけでなく新しく知る人もいるのは素敵なことです。

 私も久しぶりに読みましたが、古い版でその本を買ったときの状況や時代の雰囲気も一緒に味わいました。著者が今生きていたら、今の世の中をどんな風に小説にしたか、読んでみたかったと思いました。

2022-02-23 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『ヨルガオ殺人事件』上・下


創元推理文庫 アンソニー・ホロヴィッツ著

 シリーズの2つ目なので、最初の『カササギ殺人事件』から読むのをお薦めします。

 作家アラン・コンウェイの書いた探偵小説アティカス・ピュントシリーズにまつわる事件に、担当編集者スーザンが巻きこまれ、振り回されます。アランはすでに故人であるにもかかわらず。

 事件の謎にせまる過程で、主人公のスーザンが故人である作家との仕事や人柄について考えるところは、スーザンなりの弔いなのではと思いました。人はなくなった後も、残された人たちに影響を与えていますね。

2022-02-23 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『しょうゆさしの食いしん本スペシャル』

リイド社 スケラッコ著


 主人公がしょうゆさしの姿をしています。しょうゆさしが料理をしたり食事をするマンガです。内容は、いろんなお店での外食や、旅先で食べた名物、身近なお菓子やジャンクフード、手の込んだものから作りやすい家庭料理まで。フルカラーのぎっしりとしたマンガでかかれています。製麺機や生タコも出てくればスーパーのお総菜までと幅広さがすごい。

 この本に出ている料理で実際作った物は春巻きと挽肉入り焼き飯ぐらいなのですが、読むと今度これ食べたいなとか作りたいな、いつもの味を変えてみようかなと思えます。とにかく、食べたり作ったりしているしょうゆさしがとても楽しそうなのとリラックスした様子がいい感じです。

 たまに読みふけってしまい、買ってきた中華まんやスナック菓子を食べたくなってしまうこともありますが。この本、そのあたりの話題も大変充実しているので仕方がありません。

 旅行のパートだと広島のお好み焼き旅と伊勢うどんを食べる旅がとても楽しそうでおいしそうで、いつか本場に行って食べたいなと何度も読んでいます。

 このマンガは一人でも誰かと食べても、作っても買っても、何か食べるのって楽しいという気力を湧かせてくれると思います。

2021-12-30 | カテゴリー : 感想, 雑談 | 投稿者 : stan

福祉仏教入門講座に参加

 昨年から様々な研修がオンラインで受けられるようになり大変嬉しく思っております。

 特徴的だったのが仏教の新聞を発行している文化時報社が開いた「福祉仏教入門講座」でした。

 一人暮らしの方、障がい者の方、認知症の方など困っている人を支える手を増やすのに、お坊さんも良いかも?ということから始まったようです。

 さまざまな専門職の方のお話を聞きました。

 市民後見人や成年後見制度の仕組みや財産の取り扱いについて。

 自分が亡くなった後は、死後事務委任といって死後の儀式や埋葬をどのようにするのかを決めておく契約があるということ。障がい者の親が、死後にも子供の幸せを守りたいという「親なきあとの会」の紹介もありました。

 福祉士(困りごとのある人を支える仕事)の実例。病院内で傾聴をする僧侶など、一回一回が講師の半生をかけて積み重ねて来たことを九十分でお話しするので、とても専門的で難しいと思いました。

 私は後継のいない方の死後の墓守の相談をされた事もあり、何か参考になるのではと思って研修を受けました。

 お金の事はファイナンシャルプランナー、契約は行政書士、NPO法人などそれぞれ事案ごとの責任の重さからプロフェッショナルが務めているんだと改めて思いました。

 研修で印象に残った言葉は、「悩みのある方を自分で支えると思うと潰れてしまう。救急車になるのではなく、通報者になって下さい」という言葉が印象的でした。事故があったら人命救助はできなくても、救急車を呼ぶくらいだったらできるかもと思いました。

 困ったことのある門信徒の方を、それぞれの専門家につなげられたら良いなと思いました。

『ほしとんで』(全五巻)


ジーンLINEコミックス 本田

 つい先日最終巻が出たばかりの俳句を題材にした漫画です。

 舞台は芸術や文学などの創作を志す学生が集う大学。偶然俳句のゼミに入ることになった初心者の一年生達の学びを面白く読んでいくうちに、読んでいるこちらも俳句の基本を知っていける漫画です。

 最終刊まで読んで印象に残ったのは、句会、吟行、連句といったコミュニケーションが重要な、人と一緒に行うものについてでした。特に最終巻の連句は、ゲームのようにルールがあり、エキサイティングでわくわくしました。

 前の人の句に付ける句は、場面転換が必要だったり、使ってはいけないジャンルの言葉があるので難しいところもありますが、思わぬ言葉が出てくるなど、即興ならではの楽しみがあるように感じました。

 誰かが先に詠んでしまうかも、自分の句が選んでもらえるかどうかといった競争の要素もあるけれど、捌き(その場を仕切ったり、句を選ぶ係)を務める先生の説明や指導だったり、一同のわいわいした雰囲気もよかったです。集まったメンバーの性格や捌きの手腕で、雰囲気が変化しそうなところも面白いと思いました。

 なお、この漫画の世界ではコロナの流行は起こっていないので、ごく普通に対面授業が行われています。もし今の現実が違っていたら、この感想も違うものだったのかもと思ったりもしました。

 人と会って何かをしたくても、大きな不安を抱かずにはいられない現状は、フィクションを楽しんでいる時にも影響しているようです。

2021-09-27 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『雑貨店とある』(既刊1~3巻)

芳文社コミックス 上村 五十鈴

 ホッと一息つけるお気に入りのお店みたいなマンガです。

 生活雑貨を扱うお店には、おいしいおやつとお茶を出すカフェが併設されていて、おおらかな店長としっかりもののアルバイトエチゴがおもてなししてくれます。そのお店に集う人たちの物語です。

 面白いのは、登場人物の事情が両側から描かれているところです。

 例えば常連の落ち着いた素敵なお姉さんふうのコウ、そのコウに憧れるサツマイモ大好きなカナ。親切なコウに一方的にカナが憧れているふうですが、反対からみればコウはカナに助けられたという思いを持っています。

 他にも、エチゴとお店に来るお客さん達を中心に、それぞれの視点から物語が進んでいきます。キャラクター同士の関わりが、あるときはコミカルにあるときは切実に描かれます。おやつについての歴史や思い出が一緒に語られるところも面白いくて、登場するおやつを食べたくなります。

2021-05-12 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

2021春 みんなで本を読むー聞法会の報告

コロナ対策として、距離を取って座る、時間を短縮、マスクを付けての参加、お茶タイムはなしで、本を皆さんで読んでいます。感想や疑問を話し合います。


2/7

 法語カレンダーの二月の言葉、「念仏者の人生は まさに 慙愧と歓喜の交錯」についての短い文章を二つ読みました。

慙愧というのは、辞書によると自分の行いを省みて深く恥じることだそうです。

戦争の罪が文章に載っており、「殺人は悪いことだけど状況によって仕方が無い」「現代の殺人は許せない」という意見を聞かせていただきました。

『歎異抄』の「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし。」という、条件によってどんな悪いことでもするのが私だというお話をしました。


17

 次回の報恩講の講師をお願いしております瓜生崇先生の著書『溶け合う世界へ』を読みました。

本書は「救われるもの」と「救われないもの」という宗教がつくる境界線によって人間が苦しむという問題を提起しています。

話し合いの中では、宗教団体は悪いことするけれど宗教に差別はないという意見がありました。

人の生きがいについては否定されたら何も楽しくない、納得できないという意見が多かったです。


◆聞法会へのお誘い

 次回も『溶け合う世界へ』の続きを読んでいく予定です。テキストは差し上げますので是非ご参加下さい。

2021永代経御紐解法要と春期彼岸法要勤まる

釋尼光智

三月二十日、宗泉寺本堂にて永代経御紐解法要と春のお彼岸の法要をお勤めしました。

当日は、お参りいただきありがとうございました。お参りくださった方以外にも、御懇志やお供えをお送りいただきました。また電話や手紙で近況をお知らせくださった方もいて、なんとも嬉しく思いました。

法話は練馬区の東京教務所から粟生剛先生に来ていただき「浄土真宗の宗風」のお話をいただきました。

印象に残ったのは、真宗は聞法の道場だから参詣席が広い作りになっているというお話です。

よほど意識しない限り気づかないし、集まりなどで同じ宗派のお寺を訪ねることはあっても、あまり他宗のお寺に行く機会が無いので、とても意外でした。愛知県蒲郡のお寺の住職であり、宗派の職員でもあるという立場から様々な土地のお寺や門徒さんと関わってきた方だからこそのお話なのかなと思いました。

受け継がれてきた特徴を知って大切にしながら、今の時代にあった工夫をしていかないとなあと思った事でした。


法話の要点      

 釋龍源

粟生剛師のお話「真宗の宗風」で印象に残ったことを書きます。

「コロナですごい人出ですね」とインタビューを受けた人も混雑の原因の一つなのに、自分の事は数に入れない。渋滞の時も、なんで外出自粛なのに混んでるんだと怒ってもやはり自分は数に入っていない。いつも自分は正しい立場にいて周りが悪いと思っている。

真宗の教えが伝わって来たのも勤行(おつとめ)があるから、歴史の中で、私も先人が受け継いだものを確かめてゆくことがお勤めの意味だ。

教えを聞く聞法が大切にされてきた。法要をするだけでなく教えを聞いて私自身を見せていただく。「経教はこれを喩(たと)うるに鏡のごとし」教えを鏡として自分自身の事を教えてもらうのが聞法ということ。「物忌み(ものいみ)をしない」も真宗の特徴。日の善し悪しにとらわれない。占いやおまじないを頼りとしない。

真宗の宗風として「勤行・聞法・物忌み知らず」の三つをあげてお話して頂きました。身近なお話が多く、ご参詣の皆様も喜んでおりました。