『雑貨店とある』(既刊1~3巻)

芳文社コミックス 上村 五十鈴

 ホッと一息つけるお気に入りのお店みたいなマンガです。

 生活雑貨を扱うお店には、おいしいおやつとお茶を出すカフェが併設されていて、おおらかな店長としっかりもののアルバイトエチゴがおもてなししてくれます。そのお店に集う人たちの物語です。

 面白いのは、登場人物の事情が両側から描かれているところです。

 例えば常連の落ち着いた素敵なお姉さんふうのコウ、そのコウに憧れるサツマイモ大好きなカナ。親切なコウに一方的にカナが憧れているふうですが、反対からみればコウはカナに助けられたという思いを持っています。

 他にも、エチゴとお店に来るお客さん達を中心に、それぞれの視点から物語が進んでいきます。キャラクター同士の関わりが、あるときはコミカルにあるときは切実に描かれます。おやつについての歴史や思い出が一緒に語られるところも面白いくて、登場するおやつを食べたくなります。

2021-05-12 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

2021春 みんなで本を読むー聞法会の報告

コロナ対策として、距離を取って座る、時間を短縮、マスクを付けての参加、お茶タイムはなしで、本を皆さんで読んでいます。感想や疑問を話し合います。


2/7

 法語カレンダーの二月の言葉、「念仏者の人生は まさに 慙愧と歓喜の交錯」についての短い文章を二つ読みました。

慙愧というのは、辞書によると自分の行いを省みて深く恥じることだそうです。

戦争の罪が文章に載っており、「殺人は悪いことだけど状況によって仕方が無い」「現代の殺人は許せない」という意見を聞かせていただきました。

『歎異抄』の「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし。」という、条件によってどんな悪いことでもするのが私だというお話をしました。


17

 次回の報恩講の講師をお願いしております瓜生崇先生の著書『溶け合う世界へ』を読みました。

本書は「救われるもの」と「救われないもの」という宗教がつくる境界線によって人間が苦しむという問題を提起しています。

話し合いの中では、宗教団体は悪いことするけれど宗教に差別はないという意見がありました。

人の生きがいについては否定されたら何も楽しくない、納得できないという意見が多かったです。


◆聞法会へのお誘い

 次回も『溶け合う世界へ』の続きを読んでいく予定です。テキストは差し上げますので是非ご参加下さい。

2021永代経御紐解法要と春期彼岸法要勤まる

釋尼光智

三月二十日、宗泉寺本堂にて永代経御紐解法要と春のお彼岸の法要をお勤めしました。

当日は、お参りいただきありがとうございました。お参りくださった方以外にも、御懇志やお供えをお送りいただきました。また電話や手紙で近況をお知らせくださった方もいて、なんとも嬉しく思いました。

法話は練馬区の東京教務所から粟生剛先生に来ていただき「浄土真宗の宗風」のお話をいただきました。

印象に残ったのは、真宗は聞法の道場だから参詣席が広い作りになっているというお話です。

よほど意識しない限り気づかないし、集まりなどで同じ宗派のお寺を訪ねることはあっても、あまり他宗のお寺に行く機会が無いので、とても意外でした。愛知県蒲郡のお寺の住職であり、宗派の職員でもあるという立場から様々な土地のお寺や門徒さんと関わってきた方だからこそのお話なのかなと思いました。

受け継がれてきた特徴を知って大切にしながら、今の時代にあった工夫をしていかないとなあと思った事でした。


法話の要点      

 釋龍源

粟生剛師のお話「真宗の宗風」で印象に残ったことを書きます。

「コロナですごい人出ですね」とインタビューを受けた人も混雑の原因の一つなのに、自分の事は数に入れない。渋滞の時も、なんで外出自粛なのに混んでるんだと怒ってもやはり自分は数に入っていない。いつも自分は正しい立場にいて周りが悪いと思っている。

真宗の教えが伝わって来たのも勤行(おつとめ)があるから、歴史の中で、私も先人が受け継いだものを確かめてゆくことがお勤めの意味だ。

教えを聞く聞法が大切にされてきた。法要をするだけでなく教えを聞いて私自身を見せていただく。「経教はこれを喩(たと)うるに鏡のごとし」教えを鏡として自分自身の事を教えてもらうのが聞法ということ。「物忌み(ものいみ)をしない」も真宗の特徴。日の善し悪しにとらわれない。占いやおまじないを頼りとしない。

真宗の宗風として「勤行・聞法・物忌み知らず」の三つをあげてお話して頂きました。身近なお話が多く、ご参詣の皆様も喜んでおりました。

『奇譚蒐集家小泉八雲 白衣の女』

講談社文庫 久賀理世


 小泉八雲の著作で有名なものは雪女、耳なし芳一あたりでしょうか。アニメの昔話やラジオの放送で見聞きしたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 今回読んだのは、その小泉八雲がまだ、パトリック・ラフカディオ・ハーンという名で神学校の生徒であった時の物語です。もちろんフィクションではあるのですが、参考資料としてたくさんの本があがっています。当時のイギリスとアイルランドの関係だったりヨーロッパで起こった戦争が物語に絡んできます。

 小さな頃から不思議な伝説に興味があり、多くの人に見えないものを見てしまうパトリックを、その友人オーランドを語り手として描きます。パトリックの故郷アイルランドで休暇を過ごすオーランドですが、バンシーという妖怪に悩まされる貴族の屋敷に招かれることになります。さて、どうなるというお話。怪奇幻想の部分、アイルランドの歴史と貴族の一家の秘密にせまるミステリの部分、主人公2人の生い立ちと友情など、盛りだくさんの物語でした。

 日本に来てからの八雲はテレビ番組などでも取り上げられることが多いのですが、それ以前の八雲についてはあまり知らなかったので、とても興味が湧きました。

釋尼光智

2021-02-16 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

2020 雑記

 2020年は、お寺の行事をどうするかも、研修への参加も迷ったり、中止だったりの連続でした。今行っている活動も、研修など他の人との交流やインプットなしで継続して行くのは思いの外気力がいることだと気づいた一年でもありました。

 人としゃべる機会もへっているのでコミュニケーションがさらに下手になってきた気がして、苦笑いです。

 本格的に寒くなってきましたので、皆さんご自愛下さい。

『冬の蕾――ベアテ・シロタと女性の権利』

岩波現代文庫 樹村みのり


 日本国憲法の男女平等条項を起草したベアテ・シロタの伝記まんがです。戦前からの日本の様子を詳しく知っていて、語学に堪能なベアテさんの奮闘があったからこそ、同性の平等が現行憲法に盛り込まれたことがわかりました。

 これまで女性の権利を訴え続けてきた人たちの努力や思いの上に今があるのだなあとしみじみ。

2020-12-18 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『企画展示図録性差(ジェンダー)の日本史』

 国立歴史民族博物館で開催中の企画展示の図録です。実物の展示を見たいところですが、この時期行くにはちょっと千葉は遠いので、取り寄せました。

 まだパラパラ眺めている程度でですが、古代から近代までの時代によって、社会の中での男女差、区分が変化している例がたくさん挙げられていて興味深いです。性差の多様性が知られる様になってきた今、歴史に学ぶことは多いと思います。

2020-12-18 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『ぐるぐる博物館』


実業之日本社文庫 三浦しをん

 表紙のチャーミングさにひきよせられて買ってしまいました。日本各地の博物館をレポートした本です。展示の内容などガイドブック的な楽しみもありつつ。旅先で出会った人や博物館の職員さんと著者との会話がとても面白いです。博物館がいろんな思いと研究の集積でできていることがよくわかります。

 取材当時の本文の他に、文庫化に際しての補足やあとがきに平成の災害のその後や今般のコロナのことにも言及しています。

 取り上げられた博物館のひとつに、雲仙岳災害記念館があったのですが、自分が火砕流の被害が平成の出来事だと忘れていることに驚きました。そして、記録を残し伝えている人がいる有り難さを感じました。

2020-12-18 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

『屋根裏博物館の事件簿』

中公文庫 澤見彰

 高度経済成長のころの日本を舞台にした民俗学ミステリーです。

 内容はフィクションなのですが、登場人物の一人のモデルになった渋沢敬三は実在の人物で、タイトルにもなっている屋根裏博物館を自宅に開設し民俗学研究をしていたそうです。

 主人公の少女あずみは両親を亡くして子供の頃の記憶を失い、渋沢敬三に引き取られたという設定です。屋根裏博物館の研究員の林とあずみのコンビが、地方の風習にまつわる謎をフィールドワークを通して探っていきます。今も昔も格差があり、過酷な環境に置かれた人たちの歴史を記録しておきたいという林の姿勢が印象的です。

2020-12-18 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan

図書貸し出しコーナーのご案内

 宗泉寺の玄関に図書貸し出しコーナーがあるのをご存知でしょうか?

 浄土真宗、カルト問題、グリーフケアなどに関連した本を無料、手続きなしで貸し出しています。貸し出しの期間も自由です。コミックやお経や説教のCDなどもあります。

 法要や行事でお参りのついでにでもご覧下さい。

 自分のお寺の教えがどんなものか知りたい方、ちょっと読んでみたいと思ったら是非借りてみて下さい。

 また、研修でお会いしたある先生が仰っていた、知ること学ぶこともグリーフケアになったという言葉が印象に残っています。

 本を読むことで、ものの見え方が変わることもあります。

2020-12-18 | カテゴリー : 感想, 雑談 | 投稿者 : stan