『台湾漫遊鉄道のふたり』楊双子著

 三浦裕子訳 中央公論新社

『亡霊の地』陳思宏著 三須 祐介訳

 早川書房

 一月末現在、昨年中に読んだ本や出版された本で好きだった、良かった本のランキング企画などを目にします。つられて、私も去年読んだ本から印象に残ったもの2冊を挙げてみました。

 『台湾漫遊鉄道のふたり』は日本の植民地だった頃の台湾を舞台に、日本人女性作家と台湾人ガイドの女性が出会い別れていく物語です。二人の台湾漫遊や当時の様子を面白く読みました。ですが、個人同士の関係にも、国の支配被支配が全く無関係ではいられないのだなあとしっかりと感じさせてくれる結末でした。台湾に元々住んでいた人たちに少しですが触れられていたことも印象に残りました。

 『亡霊の地』は、同性愛者でドイツに出奔した台湾出身の作家が、故郷の町に帰ってくる話です。台湾の主人公と家族の歴史と思い出がそれぞれの視点で描かれます。台湾は現在の民主的な国で、人気の観光地というイメージが強いです。過去に日本に侵略されたとは知っていても、歴史はぼんやりとしか知りませんでした。『亡霊の地』では、政府が違う考えの人を弾圧した時代のこと、女性や同性愛者の人権が踏みにじられたことが登場人物それぞれの人生に影響していると感じました。

 二冊とも登場人物の思い出(小説なので架空のものではあるのですが)を通して、歴史や社会の知らなかったことを見せてくれました。今年もいろんな本を読めたらいいなと思っています。

2024-02-09 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : stan