創元推理文庫
フェルディナント・フォン・シーラッハ著
新米弁護士のライネンがとある殺人事件の被告の国選弁護人を引き受けることになったことから物語は始まります。引き受けてみると、殺されたのはライネンの大恩人である実業家でした。
犯人のコリーニは何も言おうとはせず、殺害の動機は一切不明。ライネン弁護士が犯人と被害者の関係を徹底的に調査したところ、無関係に見えた二人の間にあった出来事と証人を見つけ出します。裁判の結末やいかに、という法廷劇です。
感情を抑えた文章で短く読みやすいけれど、ものすごく重たい読後感でした。ドイツが舞台で戦争中の出来事が関わっているというと、なんとなく話が予想できると思う人もいるかも知れませんが、予想よりもずっと色々なものを含んだ小説でした。誰からも見捨てられたと感じ犯行に及んでしまった犯人のことや、法律って何のために作られるのだろうという疑問が心に残りました。
映画化もされており、設定が少し違ったり、原作よりも強い描写や情感が多めに表現されている感じを受けましたが、こちらも見て良かったです。レンタルやインターネットの有料配信サービスで見られます。
小説の訳者あとがきや解説もドイツの法律や歴史への補足がされていて、興味深いものでした。文庫や電子書籍で購入しやすいと思います。