『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』

新潮社 ブレイディみかこ著

 1が文庫版でも出ていますので、未読で興味を持った人はそちらから読むのをお薦めします。

 1が出たときに話題になった本なので、黄色い表紙に見覚えがある方もいるかもしれませんね。著者の息子さんは日本人の母とアイルランド人の父とイギリスに住んでおり、1ではいわゆるいい学校とされる小学校から地元の公立中に進学を決めたことから始まって、その公立中学校で、幅広い人種、親の状態が大変な子供達とも知り合います。

 学校での友だちづきあいの様子が主に書かれたノンフィクションです。お互い違う部分がある、状況の異なる人と共存するために考える方法として、同情や共感とは異なる知識と想像力を用いたエンパシーという考え方になるほどなあと思いました。
 2はそのすぐあとの続編で、ミントグリーンの表紙です。導入は身近な話題で、いわゆる断捨離をはじめた著者と夫の話から始まります。偶然知り合った移民の一家に不要品を譲ることになり、後に近所の人からの苦情もあり、さてどうなったかという話です。自分がいらない物を他の人にあげるのはいいことなのか、どうして自分がいる物は人にあげられないのかという微妙な気持ちについて親子で話されています。ひとによっては感傷と切り捨ててしまうかもしれない気持ちと現実にできる事の間を揺れ続けるという辛抱強さが1、2巻全体を通した著者の視点の特徴の一つだと思います。
 他にも、ホームレスの人のシェルターが近所にできると決まったときの住人の様子、子供の将来への親の思い、日本に住む親との話など、著者の身近な出来事を見ての話にいつの間にか引き込まれます。特に相手の言うことや様子を、冷静だけど冷酷でなく述べているところにハッとします。それに、著者のみかこさんとお子さんはいろんなことをよく話しています。それでも、徐々に親に話さないことも増えていくだろう、子どもの広がっていく世界を親は知らないことも増えるだろうという予感を持って、この本は終わります。
イギリスの音楽の話もよく出てくるので、興味のある方はそこも楽しめるかも。

釋尼光智

2022-04-30 | カテゴリー : 感想 | 投稿者 : stan